再生工事への参加

~ 住まいは創るもの ~

北袋町の民家を住まいとして購入したのは昨年の暮れであった。築五十年の建物には不動産価値はなく、通常であれば取り壊して新築するところである。しかし、住まいを新築するとそれなりの工事費が必要となり、すぐに実現はできない。既存の建物を改修し再生するのが手短な方法であった。

工事計画を進めながら、再生を支援する補助金はないか探してみた。金沢市には「伝統的建造物修復支援制度」などがあるが、この地域の民家に該当するものはなかった。石川県には個別の建物に当てはめた制度がない。文化庁の文化財登録制度は設計料の補助であり、工事費ではない。里山工房にも尋ねたが伝統工芸に限定されていた。結局、山間地に点在する民家の保存再生のための補助制度はないに等しいことがわかった。資金計画を立て、三月中旬、雪解けを待って工事に着手した。

工事の基本は構造補強と断熱である。朽ちた材料を取り換え、床面と壁面の耐力を増し、床、壁、天井の断熱性能を上げる工夫が必要である。それらは一律ではなく、それぞれの状態に合わせた施工方法を考えなければならない。大工さんには苦労をかけてしまったが、納得するまで話し合っておけば後悔することはない。

また工事のすべてを工務店に頼るのではなく、素人でも可能な内部の解体と内外壁、床の塗装仕上げは学生と友人の助けを借りて行った。住まいは商品のように買うものではなく創(つく)るものでありたいと思う。自ら解体作業に加わり思いもかけずに見つけた﨔(けやき)、地松、クリ、杉などの材料。それらをいろいろな用途に再利用した。

土台になっていた大きな﨔(けやき)を置き床として、床板の地松の板にカンナをかけてキッチンテーブルの天板に利用し、煤(すす)で黒ずんだ木材で吹き抜けの天井を組み、余ったものはテーブルの脚として加工した。そこにあった材料を使いきるように心掛け、最後にはストーブの薪(まき)となった。

またプリント合板と化粧ボードを取り除いていくと天井裏にはダイナミックな空間と材料が現れてきた。隠されていた丸太の棟木と登梁の小屋組、高い天井を持つ広々とした空間。この民家本来の姿を取り戻しつつ、採光と通風を確保するための格子で囲われた吹き抜け空間を新たに加えることで、新旧が対比されながらも互いに尊重し合う空間、新築では得られない空間を見つけ出せたように思う。

経済的理由から始まった民家の改修ではあるが、経済的には測れない良さと楽しさがある。基本的な構造、断熱、雨漏り、通風、すきま風の問題を解決すれば、現在では手に入れ難い材料、空間の質、生活スタイルを得ることができる。

一月半の工事を終え、引っ越しをしてからも週末には洗面台やげた箱、カーテン、薪置き場の制作を続けている。一時期にすべてが完成するのではなく、住みながら、民家と環境に沿いながら創る楽しさ。それは家族の生活そのものであると思う。そんなことも許容してくれる大きな幅を古い民家は備えているようである。

(建築家・谷重義行)

写真:丹念に手をかけられ、生き返った家の内部。快活に呼吸しているような明るさがある=北袋町で