Mizuki Vision ホスピタリティのある都市空間をめざして

「木造住宅の楽しみ方」

「金沢らしさのある木造住宅の楽しみ方」というテーマを頂いたので、それに沿って少し考えてみました。

講演会で仕入れた知識です。「木は腐る過程で炭素を放出するので、雑木を放置して腐らせるよりは、石油の代わりに効率よく燃やして利用し、石油燃料からの二酸化炭素を減らす方が良い。樹木は百年サイクル、石油は1億年サイクルですよ…。」薪ストーブが、実は地球温暖化対策につながるのだと言う主旨でした。なるほど!私も薪ストーブ愛好家なので、話を聞いて何となくホッとしました。樹木は光合成によって空気中の二酸化炭素を酸素と炭素に分解して炭素を体内に蓄積します。また樹木には過熟期というのがあって成長しすぎると体内に固定していた炭素を放出し始めます。腐ることも炭素を放出することなのです。木が炭素の塊なら、木造住宅は炭素のストック場と言えます。私は古民家を改修したとき、出てきた木の廃材を全て45cmの長さに切り揃えてストーブの薪にしたことがあります。50年、100年と家を長く持たせて、将来、止むを得ず取り壊すときには燃料などにして有効に活用する。毎日誰にでもできて次の世代に引き渡すエコライフです。

金沢で木造住宅を何棟か設計していると地元の(石川の)木材を使う必要性を感じて来ます。どうしたら石川の木をたくさん使えるのかと材木屋さんに尋ねると、大きな倉庫に案内されました。中には形の不揃いな丸太や板が高く積んであります。山が急斜面ということと雪の重みで、石川の木は曲がったものが多くて癖が強いのだそうです。まっすぐな柱や梁にできない材が多く残る。「これを何とか使こうてもろたら助かるんやけどな、考えてやー」宿題を出される羽目になりました。曲がった柱を縦横に組んで波打つ壁も面白いかもしれません。少しくらい曲がった木でもいいから遊び心で使うと楽しい住宅になりそうです。自然の中で再生産できる木を使って建てることは環境を守っていることになりますし、将来のために蓄えたエネルギーの中で暮らしていると思うと、金沢の長い冬も暖かな気持ちで過ごせそうです。地元の木なら尚更かもしれません。